暖かく過ごしやすい季節になるのは良いことですが、心配なのは黒光りするアイツの存在──そう、ゴキブリです。長い二本の触角。そしてトゲのようなものが生えた六本の足。あの生理的な嫌悪を掻き立てられる姿を見ただけで、げんなりする方も多いのではないでしょうか。
何を隠そう、私もそのひとりです。自宅でありとあらゆるゴキブリ対策を試しては、何度でも姿を現すヤツらの存在に頭を悩まされています。
ゴキブリ対策のひとつとして、注目を浴びているのが「ハッカ油」。自宅で愛用している方も多いかもしれません。ハッカ油は安価で購入することができ、虫除けだけではなく、掃除や美容目的など、様々な用途に使える便利なアイテムですよね。
しかし、最近では「ゴキブリはハッカ油に慣れるから効果がない」という恐ろしい噂も聞くようになりました。
すがる思いでハッカ油を導入したというのに、ゴキブリが慣れてしまうなんて聞いたら不安ですよね。あれだけ話題になっていたのに、効果がないというのは本当なのでしょうか?
今回はその真偽について調査してきました。
ハッカ油にゴキブリが慣れるって本当?
結論から言うと、残念ながら本当のようです。ゴキブリがハッカ油に慣れる可能性はあります。
ですが、それはハッカ油だけに限った話ではありません。市販の忌避剤・殺虫剤など、他のゴキブリ対策グッズにも同じことが言えます。
ゴキブリは適応能力が高く、学習能力も優れているため、同じ対策法を繰り返しても徐々に対応してしまうのだとか。現代のゴキブリは30年前のゴキブリから進化し、強くなっているので、当時の殺虫剤が効きにくくなっているそうです。本当に恐ろしい生き物ですね。
とはいえ、ハッカ油は最近普及したゴキブリ対策ですから、「ゴキブリ自体にハッカ油が効かなくなった」ということは考えにくいです。
「あれ? 効果がないな」と感じた時は、以下の点をチェックしてみてください。
ハッカ油がゴキブリに効かない原因のチェックリスト
ゴキブリ対策としてハッカ油を導入したのに、効果が感じられない場合に考えられる理由は三つです。
- ハッカ油の濃度が薄い
- ハッカ油の効果が切れている
- ゴキブリが適応してしまった
それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。
ハッカ油の濃度が薄い
最初に確認すべきなのは、使用しているハッカ油の濃度です。
虫除けとして使う時の最低限の分量は「ハッカ油20滴、無水エタノール10ml、精製水90ml」であり、これよりも薄いと効果が発揮されなくなると言われています。薄くなっていると感じたら、最大60滴まで濃度をあげて様子を見ましょう。
より高い効果を出したい場合には、ハッカ油を原液のまま使用するのもおすすめです。
まず、小皿にハッカ油を少量入れます。そして、ゴキブリの通り道になりそうな場所にその小皿を置いておきます。ハッカ油の香りが薄らいできたら、そのたびに新しく入れ直しましょう。
※ハッカ油を原液のまま使う時には、肌に触れないように注意してくださいね。
ハッカ油の効果が切れている
意外と多いパターンがこちら。濃度が十分なハッカ油スプレーがゴキブリに効かない場合は、いつ作られたものなのか確認してください。
一般的にハッカ油スプレーの使用期限は1週間と言われていますが、私の感覚だと2〜3日で使い切るべきだと思います。ハッカ油は揮発性が高い物質なので、時間の経過と共にどうしても効果が落ちてしまうのです。
頻繁に作り直すのは面倒に感じられるかもしれません。しかし、以下の記事でも紹介したとおり本当にお手軽に作れるので、こまめに作ってすぐに使い切るのがおすすめです。

ゴキブリが適応してしまった
濃度も薄くないはずだし、作ったばかりだから効果も切れていないはず。それなのに効果がないという場合には、ゴキブリが適応してしまった可能性も考えられます。
ハッカ油は便利なアイテムで香りもいいので、日常的に好んで使い続けることもあるでしょう。それが裏目に出てしまい、適応能力の高いゴキブリがハッカ油の香りに慣れてしまうケースもあります。
また、ハッカ油が発揮するのは忌避効果であって、殺虫効果はないというのもポイントです。忌避効果とは文字どおり「嫌って避ける」ということで、ゴキブリを根本からやっつけてくれるわけではありません。
家に元から住み着いてしまっているゴキブリに対しては、ハッカ油を使っても外に逃げてくれるかは怪しいところです。
ゴキブリは人の目が届かない屋根裏などに拠点を構える性質があるので、「家中のゴキブリを一掃したい」という場合には市販の駆除剤のほうが適しています。
ハッカ油以外のゴキブリ対策法
ハッカ油の効き目が薄いと感じた場合には、以下の対策方法も試してみるのはいかがでしょうか。
重曹
重曹は掃除や洗濯だけでなく、じつはゴキブリ対策でも非常に優れた効果を発揮します。
人間はゲップをすることで、胃の中に貯まったガスを抜きます。ゴキブリはそのゲップをすることができません。そのため、重曹を食べたゴキブリはガスを抜くことができず、内蔵が破裂したり、他の食べ物が食べれなかったりして、そのまま死に至るのです。実際にアメリカなど海外では、ゴキブリ対策に重曹が使われていることが多いです。
ここでは、重曹を使ったゴキブリ対策について、いくつか紹介しますね。
- 重曹のみ
重曹をそのままゴキブリの通り道に撒いておくことで、重曹がゴキブリの体や口に付着するため、その後毛づくろいのように自分の身体を舐めたゴキブリは死んでしまいます。
ただし重曹は無味無臭のため、単体ではゴキブリを引き寄せられません。この方法を選ぶのであれば、確実にゴキブリが通る道を見極める必要があります。よっておすすめなのは、砂糖と組み合わせる方法です。
- 重曹+砂糖
重曹と砂糖を1:1の割合で混ぜて放置するだけです。水に浸しておくことで、固いものを食べにくい幼虫に対しても大きな結果を発揮します。
ホウ酸団子などの毒エサに比べると、人間・動物に無害なため、赤ちゃんやペットがいる家庭でも安心して使えるのが魅力ですね。
- 重曹+ハッカ油
重曹とハッカ油の組み合わせです。上記ふたつと違って殺虫効果はないのでご注意ください。この組み合わせは「ゴキブリの姿を見たくない!」という方向けですね。
容器の中に入れた重曹100gにハッカ油を10滴振りかけ、ガーゼで蓋をして家の中に設置すると、簡単に作れる「虫除け・消臭剤」として活躍してくれます。
実際に使ってみた感想は別記事に詳しく書きましたので、こちらをご覧ください。

ブラックキャップ
アース製薬が販売している「ブラックキャップ」もおすすめです。Amazonの殺虫剤売れ筋ランキングで1位になるほどの人気商品で、レビューを眺めても好意的な評価ばかりでした。
ブラックキャップを食べたゴキブリは巣に戻り、その死骸やフンを食べた仲間、果ては卵までも死滅させることができます。連鎖的にゴキブリを死に追いやり、巣ごと壊滅させることができる優れものなのです。
たくさんある毒エサタイプの駆除剤の中でも、私はブラックキャップが最強だと思います。理由としてはかなりの即効性があり、また長期にわたって効果を発揮する持続性もあるからです。1箱12個入りで約600円と、他メーカーよりも安い値段なのも嬉しいですね。
ブラックキャップを設置する際には、以下の場所を選びましょう。
- 玄関
- ベランダ
- 台所
- 流しの下
- 浴室・洗面所
- 冷蔵庫・電子レンジの近く
ゴキブリの好む「温かい場所」「暗くて狭い場所」「水のある場所」の近くや、侵入経路となる玄関やベランダに置くのが効果的です。
バルサン
「バルサン」はゴキブリ退治として昔から有名な商品です。最近はゴキブリ対策にも様々な種類が増えており、煙が広がるタイプの駆除剤がベストとは言えません。一年を通してゴキブリ対策がしたいのであれば、毒エサタイプが最も効果的だと思います。
ただし、限定的な用途で使うのであれば、バルサンも非常に有効な場面があります。
具体的には、引っ越しして新しい生活を始めるタイミングや、旅行などで家主がどこかに出かける場合などですね。
バルサンは他の駆除剤と比較すると即効性に優れ、たった一回の施行で大量のゴキブリを駆除できるところが魅力です。その反面、卵の駆除まではできないという弱点があり、長期的なゴキブリ対策には向いていません。
大量のゴキブリが出て困っている場合、まずバルサンでの駆除を行ってから、重曹やブラックキャップなどの駆除剤でゴキブリ対策をするのがベストですね。
バルサンは煙そのものに殺虫成分があるため、使用する前にしっかりと説明を読み、取り扱いには気をつけましょう。
ゴキブリが出てこない、繁殖しない環境づくり
ここまで様々なゴキブリ対策を紹介してきましたが、そもそもゴキブリが発生しない環境を作れたら最高ですよね。
自宅で行える対策がいくつかあるので、それらも合わせて紹介します。
ゴキブリの侵入経路を徹底的に塞ぐ
誤解している方も多いですが、ゴキブリの本拠地は人間の家ではありません。ふだんは木の周りなどにいて、食料が欲しい時などのタイミングで人間の家に侵入してくるのです。
だからこそ、家の中と外を接続する場所をきちんと「塞ぐ」という意識が大切です。
ゴキブリの主な侵入経路は、
- 玄関
- ベランダ・窓
- 排水口(風呂・台所・洗濯機)
- 換気扇・エアコンの排水用ホース
など。
窓には網戸を、排水ホースの出口や換気扇にはフィルターをつけましょう。
換気扇は専用のフィルターが1000円程度で購入できます。エアコンの排水ホースには、ストッキングをかぶせて輪ゴムで縛るのが簡単な対策になります。
お風呂の排水口、シンクの排水口も「外部に繋がる穴」という意味では同じです。こちらも専用の防虫ネットがホームセンターで売っているので、ゴキブリが通れないように塞いでしまいましょう。
ゴキブリは1.5mmの隙間でも通り抜けることができるので、その経路のすべてを塞ぐのは難しいです。しかし、上記で挙げたような場所に忌避剤・殺虫剤を撒いておくことで、ゴキブリの侵入率を落とすことは可能です。
餌となるものを放置しない
ゴキブリは台所で発見することが一番多いですよね?
その理由は当然、餌となるものが豊富だからです。食べ残しや食器についた汚れ・油、スポンジについた食べカスなどは、ゴキブリにとってはご馳走なのです。三角コーナーに食べ残しを溜めないようにして、食器もすぐに洗いましょう。
意外と見逃されやすいのが、冷蔵庫の下・コンロの下といった「暗くて食品の小さなカスが落ちている場所」です。ふだんは目につかないような場所も、こまめに掃除してみてください。
ゴキブリは雑食性のため何でも食べますが、玉ねぎ・ニンニクなどのネギ類の野菜、肉・チーズ・じゃがいも・パン、油や砂糖などは特に大好物です。そのような好物がある場合、必ず密封した容器で保存することが鉄則です。醤油やソースなどの調味料も、垂れたりこぼれたりしたものはすぐに拭き取りましょう。
また、人間にとっては食べ物ではなくても、ゴキブリが食べてしまうものに石鹸が挙げられます。石鹸は洗面所などに出しっぱなしなことが多いので、使わない時には蓋つきのケースに入れたほうが安全です。
可能なかぎり水を除去する
ゴキブリは水がなければ生きていけません。
風呂場・トイレ・キッチンなどの水回りでゴキブリをよく見るのは、水分を求めてゴキブリが徘徊しているからです。
シンクや蛇口が濡れたままだと、その水滴をゴキブリが飲みにくることがありますので、できれば綺麗に拭い去りたいところです。毎回やるのは大変だと思いますが、一日の終わりにするだけでもかなりの効果が得られると思います。
徹底した除湿を行う
ゴキブリは湿度の高い場所を好みます。日本の夏は高温多湿でじめじめしているので、ゴキブリにとっては天国のような環境なわけですね。
裏を返せば、家の中を徹底的に除湿することで、ゴキブリが寄りつかない環境をつくることができます。
具体的な除湿方法として挙げられるのは以下の三つです。
- 部屋(特にお風呂や洗面所)の換気をこまめにしておくこと
- エアコンの除湿機能を使うこと
- 除湿器を使うこと
空気の通り道をきちんと確保して、エアコンや除湿器を上手に使いましょう。高温と多湿の両方を取り除くことは、人間にとって快適な環境づくりにもなります。
まとめ
繰り返しになりますが、ハッカ油が優れているのはあくまで忌避性です。確実にゴキブリ駆除をしたいのでしたら、この記事で挙げたような他の対策法を採用してみてください。
「ゴキブリ対策になると聞いたから、ハッカ油を購入したのに!」とガッカリさせてしまったかもしれませんね。
しかし、ハッカ油には市販の虫除けグッズと比べ、安心して使えるというメリットがあります。食器や食品の近く、お子さんが近づく可能性がある場所にはハッカ油、それ以外の場所はもっと強力な製品でカバーするという使い分けもできます。
ゴキブリ対策はなかなか一筋縄ではいきませんが、ハッカ油と他のアイテムを組み合わせたり、自宅の環境を改善したりすることで、今よりも確実に状況はよくなるはずです。
今年こそ快適な夏を過ごせるように、おたがい頑張りましょう。
ゴキブリ以外の虫に対するハッカ油の虫除け効果については、
ハッカ油の虫除け効果を検証した!本当に効くの?どんな虫に効くの?
の記事を参考にしてください。
